一時期Twitterでよく見かけたサイコ・スリラーっぽい話に興味を持って読んでみました。流行っていたであろう当時は全然読めないレベルだったのですが、今回は面白いほどスラスラ読めました。個人的な体感ですが、この本はかなり読みやすい部類に入ると思います。
あらすじ(ネタバレしてる部分があります)
冒頭で夫を銃殺した女性(Alicia)が逮捕されたのですが、どういうわけか頑として口を開かない。そのまま精神病院送りになった彼女の口を開かせようと、あるサイコセラピスト(Theo)が現れます。この二人の対話から彼女の過去を少しずつ探っていくことで物語は進んでいきます。
なぜ彼女は最愛の夫を銃殺したのか、なぜ話さないのか、それとも話せないのか。これらの疑問を解き明かし、彼女の精神を救うためにTheoは事件の関係者に話を聞いて回ります。すると出てくる登場人物がみんな怪しいんですよね。
AliciaとTheoの共通点
この二人は過去に父親から虐待を受けており、大人になった今でもその傷は癒やされない状態でした。Theoはそのことから「Aliciaを救えるのは自分しかいない!」という自信をもってAliciaに近づくわけです。
また、Aliciaには写真家である夫(Gabriel)とTheoには美しい女優の妻(Kathy)がいました。二人にとっては、己の生涯で唯一無二となる最愛のパートナーでありましたが、互いに裏切られてしまいます。このことは二人の大きな共通点と言えるでしょう。
感想
サスペンス好きには裏切ったり怪しい人物がどんどん出てくる展開は面白かったです。途中からTheo自身も病んでいることに気づくので、これは妄想なのかそれとも現実に起こっていることなのかわからない場面も多くなりました。
ただ最後まで読んで思ったのは、「Theoは結局何がしたかったんだろう?」ということでした。そもそも最大の手がかりとなるAliciaの日記が、誰にも見つからずに残っていたということ自体あり得ないことなんですよね。あのような状況下で、警察がそれを見逃すはずがないだろと。
パートナーからみた視点
彼らのパートナーであるGabrielやKathyから見た視点が欲しかったな、と思いました。彼らからすると互いに病んだパートナーを持っていたことになり、日常生活ではそれに対するフラストレーションを抱えていたに違いありません。
このことは彼ら二人が惹かれ合った理由にもなると考えるのは自然でしょう。そうなると彼ら目線の視点があればより物語に感情移入できるのになと感じました。
シャッター・アイランドを思い出した
物語の後半でAliciaがTheoの椅子(本来セラピストが座る)に座ったという描写を見た瞬間、映画「シャッターアイランド」が頭に浮かびました。医師だと思いこんでた人は実は患者だった、というオチの面白い映画ですね。
この話ではそこまで一緒ではないのですが、それに近いようなどんでん返しがありました。細かいツッコミどころはあったのですが、そういうところを気にしなければ楽しめると思います。
日本語版もあるらしい
この本、日本語版では「サイコセラピスト」という題名のようです。Silent Patient(沈黙の患者)から一転してセラピスト側に注目させるようなタイトルになるので、そうなるとかなり受ける印象は変わってきますね。